DO for サステナビリティ

大手町の森 10周年の節目に新時代の都市環境を考える

貢献するSDGs目標

  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 15.陸の豊かさも守ろう
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15 陸の豊かさも守ろう
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

「大手町に、本物の森を」そんな想いからスタートした大手町の森。大手町タワーの敷地全体の約3分の1に相当する約3,600m²を利用し、「都市を再生しながら自然を再生する」という大手町タワーの開発コンセプトを具現化したものです。
この度、大手町タワー・大手町の森の開業10周年を記念したイベント「大手町の森 10th Anniversary ~日本一の都市の森を目指して~」を2023年8月2日(水)~8月10日(木)に開催。初日となる8月2日には、「大手町の森 10th Anniversaryトークセッション~「都市の森」と「 しん・呼吸」を考える~」を開催しました。
第1部では、環境省 大臣官房審議官の堀上勝氏、みずほフィナンシャルグループ グループCSuO補佐の末廣孝信氏をお迎えして、東京建物 専務執行役員の加藤久喜とともに10年を振り返り、これからの展望をお話しいただきました。
ファシリテーターとして、Forbes JAPAN 執行役員の谷本有香氏にも同席いただき、トークセッションが始まりました。

こだわったのは、「本物の森」であること。都市と自然の共存を目指して

トークセッションは、東京建物で政策や環境を担当する加藤久喜による大手町の森の解説からスタートしました。

東京建物 加藤 久喜
東京建物 加藤 久喜

加藤)

大手町の森は、大手町タワーの約1.1ヘクタールの敷地のうち約3分の1にあたる約3,600㎡で、自然環境を再生するべく本物の森を目指して計画されました。植物の競争と共存がある自然の森林を再現するため、千葉県君津市で実際に森林の一部をつくり、3年の歳月をかけて施工方法や管理方法について試行錯誤しました。この手法を「プレフォレスト」といいます。
野山のアンジュレーション(地表の起伏)も再現したこの森には、「ヒートアイランドの緩和」「水の循環再利用」「生態系の確立」などの効果があります。特に生態系については、当初植えた117種類の植物は、301種類まで増えた後、2021年の段階では208種類まで減少。これは生存競争が繰り返された結果であり、日陰を好むシダなどは増えています。昆虫は129種類、鳥類はハヤブサなどの猛禽類を含む13種類が確認されており、渡り鳥の休憩地にもなっています。皇居からタヌキが訪れたり、レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)に載っている生物も確認されるなど、豊かな生態系が確立しています。

大手町の森の意義に共感。素晴らしいオフィス環境と実感

末廣 孝信
みずほフィナンシャルグループ
末廣 孝信

次に大手町タワーに本店を置く、みずほフィナンシャルグループのサステナビリティ戦略・推進担当の末廣孝信氏に、自然の森があるオフィスで働いている感想などについて伺いました。

末廣)

私は大手町近辺で15年くらい働いています。このあたりは毎日の通勤ルートでした。最初、大手町に森ができると聞いた時、このまちに森をつくるのは無理で木とかせいぜい林くらいだと思っていました。加藤さんのお話を伺い、10年間いろいろなメンテナンスも含め東京建物さんの想いがこの森をつくっているのだと分かりました。自然に触れられて、体験できて、そして実感できるというのは非常に大きいことで、世界中の都市を見てもこんなにビルがたくさん立ち並ぶ中に森ができているのは例がないと思います。そういった面で秀逸だと思いますし、他にはない取り組みだと思います。

私はサステナビリティ関連の業務を15年くらい担当していますので、その観点で言いますと、この森は我々人間に畏敬の念というか、自然とは何かということを感じさせてくれる、本当にいいお手本だと思っています。我々が考えるきっかけとして、サステナビリティとか脱炭素とか言う前に、この森に5秒でいいので立ち寄っていただくとその良さがわかると思います。

生物多様性保全のモデルケースとして大手町の森に注目

環境省の堀上勝氏からは、大手町の森の取り組みについて、自然環境の保護・整備を所管する環境省としての視点で、お話しいただきました。

環境省 堀上 勝
環境省 堀上 勝

堀上)

私は東京の西の方で生まれ育ち、環境省に入ってからは北海道、九州、沖縄などいろいろな地域の自然環境を見てきましたが、この大手町の森を見て非常に懐かしい感じがしました。私が子どものころに遊んだ森そのものという感じを受けます。そのような森があるということ自体がまず素晴らしいですし、実は今、この森が世界につながるという段階にあるのです。
2022年12月に生物多様性条約の国際会議(COP15)が開催され、今後の目標設定のなかに30 by 30(サーティ バイ サーティ)が合意されました。これは2030年までに地球上の陸域、海域の30%以上を健全な生態系として保全するというものです。現在の日本の保全域は、陸域は20.5%、海域は13.3%です。陸域ではあと9%程度の保全域をつくる必要があるのですが、国立公園などを増やすのは難しい。もっと身近で生物多様性が保全されている場所をつくり、維持・管理していく必要があります。
そのような中で、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を、国が「自然共生サイト」として認定し、認定区域を「OECM※1」として国際データベースに登録しようとしています。実はこの大手町の森はその「OECM」にエントリーするべく今準備をしていただいています。昨年試行的にこの大手町の森を審査したところ、認定に相当するという結果になりました。今まさに本審査をしていますが、まもなく結果が出る見通しです。ですから、この大手町の森が世界の保全区域の一つになる見込みであるということを申し上げたいと思います。

  • ※1:Other effective area-based conservation measures:国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的にかつ長期的に保全しうる地域のこと

日本一の都市の森を目指して、これからも

最後にみなさまから、この大手町の森を今後の都市環境のために、どう活かしていきたいか、それぞれのお考えと本日の感想を話していただきました。

加藤)

開業10周年の節目に、運営コンセプト『森(しん)・呼吸できるまちづくり』を設定しました。この「しん」には「心」からリフレッシュ、仲間と「親」しむ、生態系保全などの先「進」的な学びなど、いろいろな意味を込めています。多様な活動の拠点としてたくさんの方々に大手町の森を体験してもらうべく、ベンチを増設したほか、マルシェの開催など、都市の中で自然と人が融合する大手町タワーだからこそできる様々なイベント等を展開します。これからも都心の緑の重要性の発信、興味・関心のきっかけづくりに取り組んでいきます。

末廣)

東京建物さん、環境省さんとともに様々なイベント開催や、交流の場を設けるなど、組織の枠を超えて発信し、大手町の森の素晴らしさを伝えていくことが大切だと感じます。サステナビリティは今の世代だけでなく次世代が重要であり、子どもたちが大手町の森で自然を体感したりすることで、その一翼を担っていくということも大事だと考えます。子どもたちが植林なども体験できると素晴らしいと思います。

堀上)

自然共生サイトの審査委員から、大手町の森の生物多様性について、皇居や他の緑地をつなぐネットワークの一部として機能している点が非常に素晴らしいとのコメントがありました。大切なのはネットワークです。自然のネットワークも、ここを拠り所にした人のネットワークも大事です。こうした緑地を増やすことで人のつながりも生まれます。都会にいる人は自分が自然の一部だということを忘れがちなので、森に入ってそのことを思い出す、人と人がまたつながる、そうした機会の創出を東京建物さんにはお願いしたいと思います。

10年、50年、そして100年後の未来へ、これからも大手町の森は自然の中で成長し続け、日本一の都市の森を目指して様々な活動に取り組んでいきます。ぜひ、大手町の森に訪れて、体感してみてください。

AIさんと一緒に体験!心身ともにリラックスする「 しん・呼吸」

森や呼吸をテーマとしたトークと手軽にリフレッシュできる呼吸法のレクチャー・体験をしていただきました

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