DO for 起業支援

サステナブルな食の未来へ。若手シェフを支援する「チャレンジキッチン」(後編)

貢献するSDGs目標

  • 8.働きがいも経済成長も
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 目標8 働きがいも経済成長も
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を

東京建物では、社会課題の解決に向けて「食」というジャンルで挑戦する若いシェフたちを、「チャレンジキッチン」という公募形式のコンテストで応援しています。前編のシェフと料理の紹介に引き続き、後編では、東京建物がなぜ食を通じて社会課題の解決に取り組むのか、その理由を担当者からお話します。

食を通じた社会課題解決の在り方をどう示していけるか

東京建物 富田 龍彦

チャレンジキッチンの企画プロデュースを担当している東京建物ビル事業企画部の富田龍彦は、若手シェフにとって飲食店の出店にはこれまで初期費用や内容の自由度など高いハードルがあった、と考えています。
「チャレンジキッチンはもともと2006年に株式会社ケイオスによって発案・実施された取り組みです。それをより初期費用を押さえ、自由な形で独立開業に向けたチャレンジができるキッチンカーという新たな形態で、一昨年から東京でスタートしました」
キッチンカーだからこそ、お店のファンというより、シェフのファンを生み出すことにつながる。そしてまちに暮らす人々に「おいしい」の裏にある生産者の存在やこだわり食材が持つストーリーを感じてもらえたら、という想いもあります。
「シェフの挑戦や夢の実現をお手伝いすることも重要なのですが、同時に社会課題の解決のために、食を通じてどんな取り組みができるかも大切にしています」

食に関連する社会課題は多く、例えばIPCC*による調査ではフードロス・廃棄によるCO2の排出量は全世界の8~10%(2010~2016年)と推定されており、これは自動車から排出されるCO2とほぼ同量とされています。
また水資源の問題、貧困・飢餓、社会的な孤立(例えば孤食)などSDGsに掲げられている多くのテーマが食を通じてアプローチできます。
生活の根源に関わる「食」だからこそ、一人ひとりの日頃の選択を少し変えるだけで、社会に対する大きいインパクトになる。そこで、東京建物では食に関連する社会課題の解決に向け、今までより深く関与するために独立開業を支援するチャレンジキッチンをプロデュースすることにしました。
*気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)

2人にお願いした理由と、お客様の反応に感じる手応え

長内シェフ
金武シェフ

数多くの応募があるなか、選考では社会課題の解決へのアプローチを重視しました。
「2人を選考したポイントとして、長内シェフ(ハヤシライス)は、フレンチレストランでのご経験を通したフレンチの技術をベースに、フードロスの解決につながる料理を提供していくという意気込みと、それを実現するおいしさを提供できるシェフであった点、金武シェフ(カレー)は、食を通して健康を作っていくというコンセプトのもと、おいしいを前提とした健康に良い食事の在り方を探究する、といった姿勢がとても素晴らしいと感じた点です。金武シェフは、おいしいカレーを提供しながら、食べて健康になれるということを自分自身の20kgのダイエットでも実証しています」

2023年1月に出店してから、長内シェフと金武シェフのもとに、お客様からたくさんの好意的な反応が届いており、前編でもご紹介したように、おいしさだけでなく、料理に対する考え方・姿勢にも共感してもらえるリピーターが増えています。
お客様から毎日得られる反応は、2人の独立へ向けた確かな足がかりになるはずです。同時に、東京建物としても、チャレンジキッチンの取り組み自体が高く評価されている手応えを感じています。

サステナブルな取り組みは、社会に定着することが大切

東京建物ではTOKYO FOOD INSTITUTE(TFI)という一般社団法人を立ち上げ、新たな食の価値を創出するための取り組みとして、新規事業支援や食の未来を創る事業・人材育成により国内外の様々なプレイヤーの共創を生む食のエコシステムを構築し、持続可能な社会の実現や人々の暮らしを豊かにするための活動を推進しています。

<活動で大切にしていること>
1.Research & Development (研究開発)
2.Deployment (社会実装)
3.Education (教育)

この中でも特に「社会実装」の部分には力を入れています。良いアイデアも社会に実現できなければ机上の空論のままです。様々なアイデアを検討するだけではなく、実際に社会に実装し、しっかりと定着させていくことを重要視しています。

チャレンジキッチンもこうした活動の一環であり、同時にキッチンカーを通じて街の賑わいづくり、「まちづくり」にも貢献できると考えています。
「江戸時代には、日本橋川沿いに魚河岸が存在するなど歴史的にもこのエリアは食および食文化に縁が深い場所です。その場所に、若手シェフがチャレンジして切り開く未来が加わり、過去から未来への展望が広がることを願っています」

都市における食の循環型社会の実現や、八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアでの食を通じたコミュニティ創出による社会イノベーションの推進、地域住民・テナント従業員の食選択の変化による社会としての変革など、様々な波及効果を狙い、今後もチャレンジキッチンおよび食の未来を見据えた活動を続けていきたいと考えています。

前編はこちら

若手シェフ2名が挑戦する八重洲ビジネス街のキッチンカー

プロフィール

東京建物 ビル事業企画部 富田 龍彦

2018年東京建物に入社。ビルマネジメント第一部において物件の運営管理に携わるとともに、マルシェやテナント対抗スポーツイベントの企画・運営など、エリアマネジメント活動にも従事。2021年よりビル事業企画部へ異動し、一般社団法人TOKYO FOOD INSTITUTEの立ち上げ、事務局業務を担う。

TOKYO FOOD INSTITUTEについて

名称
一般社団法人TOKYO FOOD INSTITUTE
設立
2021年4月
所在地
東京都中央区京橋1-12-7
URL
https://tokyofoodinstitute.jp/

日本から新たな食の価値を創り出すことを目指す一般社団法人。食に関わる産官学連携、オープンイノベーションの推進や、オウンドメディアやイベントを通じた国内外への情報発信、食に関わる人々への学ぶ機会や情報の提供と、それによる人材育成などの活動を通じて、社会貢献を目指しています。

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