DO for 再生

サステナビリティを拡張し、新たなロールモデルの実現へ(RegenerAction Japan 2023レポート後編)

貢献するSDGs目標

  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 13.気候変動に具体的な対策を
  • 15.陸の豊かさも守ろう
  • 17.パートナーシップで目標を達成しよう
  • 目標11 住み続けられるまちづくりを
  • 目標13 気候変動に具体的な対策を
  • 目標15 陸の豊かさも守ろう
  • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

サステナビリティの考えを発展させた新たな概念「リジェネレーション」の思想や取り組みを、日本ならではの文脈から理解し、世界に発信する国際カンファレンス『RegenerAction Japan 2023』。前編ではリジェネレーションの思考と世界の潮流を学ぶセッションの様子をお伝えしました。後編ではリジェネレーションの思考を体感するアンカンファレンスセッションと、本イベントのサポーターとして参画したサントリー、東京建物のリジェネレーション実践例をご紹介。また、スタートアップ企業によるピッチコンテストの結果もお伝えします。

リジェネレーションの思考を体感する~アンカンファレンスセッション~

アンカンファレンスとは参加者も主体的に参加し、課題に対して自らの関与を高められるワークショップ形式のセッション。イタリア・ポリカでのRegenerActionでも導入されています。今回は東京のYNK(インク=八重洲・日本橋・京橋)エリア※をテーマに設定し、Future Food Instituteが掲げるリジェネレーションを推進する上で注目すべき5つの要素(EARTH・HUMAN・SOCIAL・CULTURAL・ECONOMIC)に即してディスカッションしました。

  • ※Yaesu、Nihonbashi、Kyobashiの頭文字をとってYNK(インク)と呼ばれています。詳しくはこちら

食の豊かさを育んだYNKを多様な視座で捉えなおす

このセッションでは学生、研究者、地元ワーカー、海外からのゲストなど多様なバックボーンを持つ参加者が5つのテーブルに集い、リジェネレーションの思考を学ぶプログラムを受講した東京建物の社員がファシリテーターを務めました。第1のフェーズではYNKの課題を抽出。第2のフェーズでは課題に対するビジョンと具体的なアクションについて意見を交わしました。
進行役はFuture Food Instituteのアレッサンドロ・フスコ氏と深田昌則氏。オープニングトークで「魚河岸があったり、江戸前寿司が生まれたりと、YNKは江戸時代から食の流通に縁の深い場所。独自の伝統・文化が息づいています。Future Food Instituteも東京建物とともに『リビングラボ』という食を中心とした取り組みをスタートした場所です。食の豊かさを育んできた土地の記憶を大切にしながら、このまちのリジェネレーションを考えていきます」と語りました。

各テーブルからは「現在はオフィス街の印象が強く、歴史や魅力が伝わりきれていない」「このエリアで働く人々の健康や幸福度を高められないか」といった課題が。白熱した議論の後、解決のキーワードを書き出した多数の付箋紙がホワイトボードに並びました。
クロージング前の共有でFuture Food Instituteの両氏は、「すばらしいアイデアがたくさん出ました。各テーブルのメンバーがつながって、なんらかの形でアクションを継続していただけたらありがたい。これらのアイデアに賛同できる人や団体がいればぜひチームとして活動してもらいたいですね」と、拍手を送りました。

リジェネレーションの実践例を学ぶ

アンカンファレンスと並行して、大ホールではリジェネラティブな取り組みを続ける地域や企業の実践例などが6組のスピーカーから紹介されました。その中からサントリーと東京建物の講演をお届けします。

「水と生きる」~サントリーのサステナビリティ経営〜

「水と生きる」をコーポレートメッセージに掲げるサントリー。水は最も重要な原料であることから「水理念」を制定し、環境基本方針の最上位に「水のサステナビリティの実現」を掲げて水の健全な循環に貢献する取り組みを進めています。本セミナーでは、サステナビリティ推進部長の北村暢康氏に同社の主だった活動を語っていただきました。
そのひとつが2003年からスタートした「サントリー天然水の森」。水源林を再生させ、清冽な地下水を涵養かんようしています。

多様な生態系を取り戻し、豊かな水を育む

「天然水の森」では、工場で汲み上げている地下水の2倍以上の水を涵養するため、全国で約12,000haもの森林を整備しています。これは東京の山手線内(約6,300ha)のほぼ2倍の広さです。
北村氏によれば、水源の涵養には多様な生態系ピラミッドの再生が欠かせないとのこと。
「そのために適度に間伐をして森の中に日光を届け、下草や低木を育てます。すると落ち葉や草の根などをすみかとする土壌動物が増えて土を柔らかく耕し、森に降った雨が地中に浸透しやすくなります。動物が増えれば糞や死骸を分解する微生物も増加して土壌の水質浄化機能も高まります」
土壌の侵食や流出が発生した森の再生や、生態系ピラミッドの頂点である猛禽類を守るプロジェクトも推進しているそうです。

日本で初めて取得した水の国際認証

次世代に向けた環境教育「水育」にも積極的に取り組み、親子で自然体験を行う「森と水の学校」と、小学校での「出張授業」を展開。2015年からアジア・ヨーロッパにも拡大し、2022年までの累計参加者は45万人を突破しました。
こうした水のサステナビリティ実現を目指すさまざまな取り組みが評価され、サントリーは日本で唯一のAWS(Alliance for Water Stewardship)認証を取得しています。
北村氏は「サントリーの企業理念には社会と自然環境とともに成長するという意志が込められています。日本初のAWS認証企業として、サステナビリティへのリーダーシップを発揮していきます」と未来を見据えました。

Keyword

AWS認証

世界自然保護基金(WWF)などの国際NGOと企業が共同で設立した、水のサステナビリティをグローバルに推進する機関。世界中の工場を対象とした持続可能な水利用に関するAWS認証を開発し、水の環境保全などに取り組んでいます。
サントリーの森の生態系を再生する取り組みは『サントリー天然水の森 生物多様性「再生」レポート』にまとめられています。

サステナブルなまちづくり~未来につながる「まち」に向けて~

長期ビジョン『次世代デベロッパーへ』を掲げ、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」のより高い次元での両立を目指す東京建物。そのサステナブルなまちづくりを、代表取締役専務執行役員の和泉晃が実例を通してご説明しました。

都市を再生しながら、自然を再生

都心における取り組みとして挙げたのが「都市を再生しながら、自然を再生する」と謳った「大手町の森」です。希少種を含む208種の植物、昆虫類129種、鳥類13種が確認され、2023年に生物多様性の保全が図られている区域として環境省から「自然共生サイト」に認定されました。
物流施設事業からは環境配慮型物流施設「T-LOGI」シリーズをご紹介。屋上に設置した太陽光パネルで生み出した再生可能エネルギーを自施設にて消費し、余剰電力を他の保有物件に自己託送する一連の取り組みは、同年に日本不動産学会の「国土交通大臣賞」を受賞しています。

リジェネレーションを体現する人材の育成もスタート

リジェネレーションの思考を学ぶ社内の研修プログラムも始動しています。
「今後は皆さまと一緒にリジェネレーションの実現につながる活動を拡大していきます。リジェネレーションの視点を取り入れて、未来につながるサステナブルなまちづくりへと歩みを進めます」と、決意を新たにしました。

Keyword

自然共生サイト

2030年までに国土の陸・海それぞれ30%で生態系を保全する国際目標「30by30」の達成に向けた主要施策。「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定します。2023年10月、「大手町の森」を擁する複合施設「大手町タワー」が認定されました。

リジェネラティブピッチコンテスト

スタートアップ6社が登壇し、「リジェネラティブ」をテーマにした商品・サービスをご提案いただきました。
創意あふれるプレゼンテーションの中、日本古来の食材と海の生態系に光を当てたシーベジタブルがRegenerActionJapan賞に輝きました。副賞として2024年4月にイタリアのポリカで開催されるRegenerActionへのご招待枠を獲得されました。
東京建物賞は、こんにゃくを原料としたヘルシー素材「Ninja Foods」を開発したSydecasシデカスが受賞。食をテーマに世界のベンチャー企業が集まるスペインでのイベント「フード・フォー・フューチャー」へのご招待枠を獲得されました。

以上、多様な分野からのアプローチに新たな刺激を受けたカンファレンスとなりました。
東京建物は、本カンファレンスの参加企業をはじめ、リジェネラティブな活動を続ける団体、企業、地域と協力し、未来のまちづくりへのアクションを発信していきます。初開催となったRegenerAction Japanが、Regenerative City Tokyoを実現するきっかけになれば幸いです。

前編はこちら

リジェネレーションの思考と世界の潮流とは?

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