Q1 社員の人柄と、事業の将来性が入社の決め手に?
東京建物に入社する決め手のひとつになったのは、5日間の配属型インターンシップです。実際に先輩社員の隣で働いたのですが、仕事への向き合い方に強く共感しました。優しく穏やかでありながら、会社を成長させたいという熱意にあふれているところ。目の前の仕事に全力投球しつつ、先々の影響にも思いを馳せているところ。とてもバランスが取れていて、まさに自分が目指す働き方そのものでした。
もうひとつ重視したのは、事業の将来性です。大学では会計学を専攻していたので、志望企業については有価証券報告書などIR情報も確認するようにしていました。東京建物は大手デベロッパーのなかでは売上がそこまで大きくはありませんでしたが、事業が多岐にわたっていることが数字に表れていました。温泉、駐車場、ホテルなど、かなり裾野が広い。不動産業は当時、既存のビジネスモデルが成り立たなくなりつつあると言われていましたが、東京建物ならば挑戦し続けて乗り越えられるはず。そんな期待感にも背中を押されました。
Q2 「ビル管理」に対する印象が180度変わったのはなぜですか?
現在のビルマネジメント部門に異動したのは入社4年目。正直、決まったときは複雑な思いでした。ビル管理に対して抱いていたのは、テナントからの要望に応えたり、設備に不具合があったら修繕工事を行ったりなど、受け身の業務というイメージだったからです。開発が「攻め」なら、ビル管理は「守り」。漠然とそんな認識があったので、この異動にトキメキは感じませんでした(笑)。
ところが実際に働きはじめると、まず渋谷エリアの大規模再開発に向けた種地ビルの取得業務や、グループ会社へのビル売却業務を担当。五反田エリアでは、ある企業が一棟まるごと自社利用しているビルをマルチテナントビルに転換するための大規模リニューアル改修工事を計画し、プロジェクト推進も担当しました。思いがけず、管理業務に付随して発生するダイナミックな業務も任せてもらい、私としてはうれしい限りでした。
しかし、何より驚いたのは、本業とも言える不動産管理の業務。思っていた以上に「攻め」の側面が強く、学ぶべきことが多かったのです。それまでの先入観が180度変わるくらい、クリエイティブで刺激的な仕事。今後どんなキャリアを歩むにせよ、必ず生きてくると確信しました。
Q3 具体的には、どんな取り組みに挑戦しましたか?
ビル管理のミッションは「物件の価値を最大化すること」。物件の魅力を高めれば、テナント企業様の満足度が向上し、空室が発生しにくくなります。つまり、賃料収入の増加が見込める。ただ、いかにして物件の魅力を高めるかという点には決まった答えがありません。そこが難しくもあり、この仕事のおもしろさでもあります。
さまざまな施策があるなかで、「不満要因の解消」はとりわけ重要です。設備の不具合など、困り事のご連絡をいただいたら迅速に対応します。定期的にアンケートを実施し、お客様の声を拾うことも欠かせません。そこから潜在ニーズを探って、より過ごしやすくなるよう改修工事を行うこともあります。ビル管理は、積極的に困り事の芽をつみ取っていく「攻め」の仕事でもあるのです。
さらに一歩踏み込んで、新たに「付加価値をつくる」アプローチにも挑戦しました。共用部の有効活用や、ビル全体でのイベント開催などの取り組みです。それだけではありません。渋谷のとあるビルでは、ごみ分別を促進するための委員会を立ち上げました。渋谷区には、リサイクル率8割を下回るビル所有者に協力金を課す条例があり、その対策としてビル全体で取り組みましょうと呼びかけたのです。テナント企業様におけるメリットとしては、従業員様の環境意識向上や環境に配慮した企業活動を対外的にアピールできることなどが挙げられます。この施策を通して、古紙回収のための回収ボックスを配布するなど、私たちも率先して動き、入居者の方々を巻き込んでいきました。アンケートを取ったところ、「ビルの目指している方向性が素晴らしい」「従業員の環境意識向上にもつながり、とても良い取り組み」といった評価をいただきました。環境配慮という切り口で、物件の魅力を高めた一例です。
Q4 Hareza池袋では、「エリアマネジメント」に注力したそうですね?
「Hareza池袋」は、2020年7月にグランドオープンした劇場・区民センター・オフィスなどからなる大型複合施設です。私は運営担当として、各種イベントを中心にしたソフト面の施策に力を入れています。その際に意識したのが「エリアマネジメント」という概念。周辺エリア全体の魅力を高めることで、個々の物件の価値も高めようという取り組みです。
なかでも思い出深いのが、私が中心になって企画・実行した大規模な防災イベントです。豊島消防署様にご協力を仰ぎ、都内に1台しかないVR体験車、起震車、煙体験ハウスなどを、Hareza池袋内にある中池袋公園に設営。避難訓練の後、各防災コンテンツを体験するというプログラムでした。参加したテナント企業様は数十社におよび、地域住民の方々も巻き込んで大々的に行ったため、当日は大変な活況を呈しました。これほど大規模かつ本格的な防災イベントは、他のビルではなかなか体験できないこと。地域住民の方々にとってはなおさらです。実際、公園に立ち寄られた方からは「素晴らしいイベントだったよ。今後もどんどんやってね」という嬉しいお声をいただきました。テナント企業様の社員の方々からも大変好評で、ものすごく達成感がありました。
防災イベント自体は、直接的に利益を生むものではありません。しかし、賑わいをつくり、周辺エリアの防災意識や一体感を高めることができます。「このまちに来るとなんだか楽しい」「自然と勉強になる」という漠然とした思いをきっかけに、人が集まってくれるようになります。それがエリアの価値向上につながり、ひいては物件の価値も高めるのです。
池袋にはクリーンなイメージを持っていない方も多いかもしれません。以前の私もそうでした。しかし現在は、「国際アート・カルチャー都市構想」を推進する豊島区の取り組みもあって、まちの雰囲気は様変わりしました。
ビル管理という立場でそんなまちづくりの一端を担っていることに、大きな喜びを感じています。
Q5 齋藤さんが描く未来は?
入社前からまちづくりに憧れていたので、将来的にはやはり大規模再開発に携わりたいと思います。その際、ビル管理業務で学んだことは必ず役立つはず。特に、ソフト面の施策を中心としたエリアマネジメントには大きな可能性を感じています。賑わい創出、文化発信などの文脈は、これからますます重要になるでしょう。建築というハード面だけでは限界があるのです。デベロッパーの社会的役割は今後、開発フェーズだけではく、エリアマネジメントにも拡大していくのではないか。そんな予感があります。もし再開発に携わる日が来たら、自分たちのアイデアを一方的に押しつけるのではなく、地域の方々が思う「このまちらしさ」を尊重し、一緒に話し合いながらかたちにしていきたいですね。